久留米競輪場を舞台に開催された熊本競輪GⅢ開設73周年記念「火の国杯争奪戦」は9日、12Rで決勝が行われ、中本匠栄(36=熊本)がGⅢ初優勝を飾った。123期生によって競われた6R「競輪ルーキーシリーズ2023プラス」も熊本の佐藤壮志(20=熊本)が制し、来年6月再開予定の熊本競輪開催に向け、肥後の男たちが躍動した。

 決勝は松岡辰泰―嘉永泰斗―中本―塚本大樹と並んだ地元勢がレースを支配。松岡が赤板からブン回すと2角から嘉永が飛び出し、最後は3番手から中本が抜け出して渾身のVゴール。2020年9月伊東GⅡ共同通信社杯の優勝はあったが、GⅢは初制覇となった。

 まさに地元大団円だった。圧倒的強さを示して3連勝で勝ち上がってきた新山響平や、郡司浩平など強敵ぞろいの中、炎がほとばしるほど殺気立った4人のパワーが勝った。中本は「前と後ろに助けられました。自分は何もしていないし、ラインのおかげです」と話し、男泣き。万感胸に迫る思いだった。

 3日目には決勝の並びを巡り塚本と長い時間、話し合った。競走得点は塚本が上だったが「大樹に甘えさせてもらって」3番手を回ることになった。

「追い込みに回ってこれまでは、ただ点数だけでいい位置を回っていただけ。だから大樹の話はすごいプラスになった。明日からはまた気持ちを入れて、追い込み選手としてやることをやっていきたい」と決意表明。

 目標がいなければ競りも辞さないような塚本からすれば、中本のスタイルは違って映ったのかもしれない。そんな後輩との深い話は、明らかに中本の心を揺さぶった。

 九州の特別戦線は今、若手の台頭が著しいが、生粋の追い込み型が少ない。中本がさらに進化すれば戦力はかなり厚みを増す。これからも塚本らの仲間たちと高いレベルで切磋琢磨して己を磨いていく。