9日に開幕する立川競輪FⅡ「東京スポーツ杯」に誰よりも燃えている女傑がいる。板根茜弥(34=東京)だ。

「あの時のことはまだ去年のことみたいに感じているんです。もう、4年前なんですよ」

 2019年12月に初優勝を飾ると、優勝者の場内インタビューでナイアガラの滝のような涙を流し、叫び、喜びを爆発させた。詰めかけたファンも熱狂し、「イタネ、おめでとう!」の渦が巻いた。

「また12月に呼んでもらえたってことは…」

 ヒンヤリとほほを伝う空気が〝優勝〟の2文字を誘う。そのためにも「勝ち上がりで1着を取って、歌いたいです!」とムードづくりから始める。丁寧に「適正音量で歌いますから」と冷静だ。

 その板根が指定練習の時にまとっていたのが男子のS班が身に付ける赤いパンツで「えっ、これ? そう、あの方のです!」と頬を赤らめた。

「練習でピンクのパンツを履いていたら、平原(康多)さんが『珍しいな』って。それで『その赤いパンツの方が珍しいですよ~』って返したら、練習用のものをくれたんです」

 しかし、表情に影が落ちる。「平原さんがS班ではなくなるので、はいていていいのか…」。悩みを抱えるが、イタネの心は一途。顔を上げ「平原さんは私にとってS班。またS班に返り咲いてもらうためにも、履き続けて応援したい!」とシャウトした。

 傷ついた平原にエールを送るためにも、今節は優勝あるのみ。シャウトあるのみ。初日7Rは「軽くなったんですよ、立川」の新しく塗り替わった走路を突き抜ける。