1年間にわたって125、126期の新人選手にスポットを当ててきた「Challenge! 新人競輪選手紹介」。男子の大トリを務めるのは同世代の〝エース〟になるべく努力を続ける斉藤英伊須(21=青森)。おっとりとした雰囲気の中に熱き思いを秘める3代目レーサーに迫った。

 祖父(敏男、34期=引退)、そして父・紳一朗(82期)も競輪選手という家庭に生まれ「小さいころから自分も競輪選手になりたいなと思っていました」という夢を抱いた。

 高校から自転車競技を始め「主にポイントレースに出ていました。八戸バンクを使わせてもらうこともあったし、たくさん自転車に乗り込んでいました」と多くのスター選手を擁する練習場で脚力アップを図ると、125期の試験に合格。無事に養成所を卒業し、3代目レーサーとして祖父や父が戦ってきた舞台に上がることになった。

 昨年7月本デビュー後は積極的な走りを心掛けながらもコンスタントに優出するなど素質の高さを示す一方、決勝では惜敗が続き、2024年のうちに初優勝を飾ることはできなかった。待望の初Vは今年2月の松阪。同期が4人そろった激戦を強烈なまくり追い込みで断つと、このV以降は4月終了時点で4場所走って12戦10勝2着2回3Vと勝ち癖をつけ、今のチャレンジでは屈指の存在となった。

 昨冬は「同期で仲のいい平根優大を頼って」いわき平へ移動。そこでの練習がブレークのキッカケとなったようだ。また「どちらかというとダッシュがないので、そこの強化を長い間取り組んできた」成果が実り始めていることや「調子自体も上がってきた」といった諸々の歯車がかみ合ってきたことが好成績に結びついている。

 親子で師弟というレーサーは数多くいるが、その関係性は様々。例えば郡司浩平は父(盛夫さん)に弟子入りする際「親子ではなく師弟になる」といった誓約書にサインし、家でも師弟として過ごしていたというのは有名な話。ただ、斉藤親子の場合は「師弟という感じはあまりないですね。練習も別ですし、基本的には何も言われません」とのこと。

 それでも「たまにバイクで引っ張ってもらったり、アドバイスをもらうことはあります」。父親でもあり同業の先輩でもある、よき理解者が身近にいるのは大きな強みと言えるだろう。

 自主性を重んじる方針のもと、ノビノビと、そして力強く育ってきた好青年には、まだまだ計り知れない伸びシロが感じられる。輪界のエースを目指す挑戦を長い目で見届けたい。

Q&A

 ――英伊須(えいす)という名前の由来は

 斉藤 なんでも一番になれるように、っていう思いで付けてくれたみたいです。ちなみに、父の車はハイエースなんですが、これはただの偶然で自分の名前とは全く関係ありません(笑い)。

 ――趣味や休日の過ごし方は

 斉藤 家で映画を見たりするのが好きです。あとサウナに行ったりもします。

 ☆さいとう・えいす 2004年2月3日生まれ、青森県八戸市出身。173センチ、74キロ。八戸工業大学第一高校卒業。師匠は父の紳一朗(82期)。