125期、126期のルーキーを取り上げる「Challenge! 新人競輪選手紹介」。中西勇(32=福岡)は陸上自衛隊、大学、社会人を経て、兄・中西大(和歌山・107期)が待つ競輪の世界に飛び込んだ異色の経歴を持つレーサーだ。

 競輪とは無縁の道を歩んでいた。地元久留米の祐誠高校に特待生として進学し、ハンドボールに打ち込んだ。卒業後は「特にやりたいこともなかったし、食事も寝るところもあって、給料ももらえて、人の役に立てるから」と陸上自衛隊に入隊。大分県の湯布院駐屯地に配属され、戦車などを扱う部隊で約3年間を過ごした。

 その後は、教員免許の取得を目指し九州共立大学に進学。ハンドボール部で活躍しながら、体育の教員免許を取得した。卒業後はトライアウトで合格した沖縄のクラブチームでプレーを続けながら、航空会社に就職。空港業務に携わっていた。

 しかし好きで続けていたハンドボールだったが、沖縄での生活が2年を過ぎたころ「将来を考えた時に、行き詰まりを感じ始めて…」。そんなとき、兄・中西大の存在が背中を押した。

「体を動かす仕事でご飯を食べていきたかったし、兄が競輪でどれぐらい稼いでいるかも、何となく分かっていたので、自分も競輪選手になりたいと思いました」

 まずは兄のいる和歌山でアマチュア修行を開始。池田智毅氏(68期・引退)のもとで基礎を学びながら養成所試験を目指したが、2度の不合格を経験する。

 環境を変えるため地元の福岡に戻ると、小川賢人(福岡・103期)に師事。〝育成のスペシャリスト〟藤田剣次の手助けもあり、3度目の試験でついに合格をつかみ取った。「小川さんや藤田さんに本当にお世話になったし、なにより池田さんから教わった基礎があったからこそ」と感謝を忘れない。

 昨年5月平塚のルーキーシリーズでデビュー。兄譲りの先行を武器に10月松山で初優勝、今年2月岸和田で2度目の優勝を飾った。「二分戦なら基本は誰も出させないつもり。後方に置かれて何もできないのが嫌なので」とすでに徹底先行のスタイルを確立し、みるみる力を付けている。

 目標とする選手に新山響平の名を挙げる。「S級で突っ張って勝てるのは究極の形です。それができればラインの選手も、なにより自分も楽ですし」と理想を追い求める。

 32歳と年齢的には遅いデビューとなったが焦りはない。「一歩ずつできることを探して、それを強化したい」と着実に前進を誓う。異色のキャリアを経てたどり着いた競輪の舞台。新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。

Q&A

 ――お兄さんとの関係性は?

 中西 組み立ての改善点や考え方など、気付いたことを都度(通信アプリの)LINEでアドバイスしてくれます。自分のことを気にしてくれていて、優しいです。

 ――頼れる同期は?

 中西 小倉の松本定と愛知の高野信元。2人とも考え方がすごくしっかりしていて、僕なんかよりすごく大人です。

 ――どんなレースを見せたい

 中西 見ている人がヒリヒリするようなレースをしたいです。

 ☆なかにし・ゆう 1992年4月10日生まれ、福岡県久留米市出身。178・2センチ、88キロ。養成所順位は61位。座右の銘は「無限の可能性」。