125期、126期のルーキーを取り上げる「Challenge! 新人競輪選手紹介」。ガールズのトリは輪界のサラブレッド、高木萌那(21=福岡)に飾ってもらった。
なるべくして競輪選手になった。父は現役で来期のS級復帰を決めている和仁で母方の祖父、工藤元司郎さん(16期=引退)も通算573勝の元選手。ただ、だからこその回り道や悩みもある。
「自意識が芽生えた頃から自宅のテレビで普通にレース映像やオッズ表示が流れていて、競輪は身近で生活の一部でした。でも父から自転車競技部のある地元の祐誠高への進学を勧められても『絶対にしない』と神戸弘陵学園高で野球をすることにしました」
一度は競輪から距離を置いたものの、プロとして生計を立てたいとの思いは強かった。2010年から2021年まで女子プロ野球も存在したが、それだけで食べていけるほどの収入は見込めない。輪界の門を叩くことは自然な流れだった。
競技歴はなかったが、身体能力の高さで競輪選手養成所は適性で一発合格。日々の鍛錬の成果で第3回の記録会ではゴールデンキャップを獲得した。在所3位、卒業記念レースでは決勝3着。昨年5月のルーキーシリーズ(富山)では在所1位で卒記チャンプの仲沢春香を下して優勝し、同7月高松の本デビューでも優出と選手生活は順風満帆と思われた。
だが、その後の成績は安定していない。ピンピンで決勝に進むこともあれば7着、7着で沈むこともある。
「そう簡単じゃない。通用していないのは何かが欠けているからだと思います」
競輪一家で育ったからこそ期待値や注目度は高い。「脚があるのに勝てない」と指摘され、逆に「競技歴がないんだし、これからだよ」と励まされることもある。そんな声に「葛藤もある」というが「甘えたら終わり」と自分に言い聞かせている。
7月で51歳になる父は単騎戦でもどん欲な走りで1着を取るなど元気いっぱいだ。そんな姿を見て感じることもある。
「昔はぶっ倒れるまで練習する姿を見ても何とも思わなかったけど、いざ同じ立場になったらすごさが分かる。尊敬しています。多くを語らない人だし背中で見せてくれているのかもしれません。負けてられないですね」
目指すは地元福岡の小倉で毎年11月に開催されるGⅠ競輪祭女子王座戦だ。「選考期間中に2、3回は優勝しないといけないし、ただ出たというだけでもダメ」。久留米はガールズのトップ選手が多く在籍し、環境は申し分ない。迷わず突き進んだ先に晴れの舞台が待っている。
Q&A
――賞金の使い道
高木 開催が終わって帰ると真っ先に向かうのが銀行で。マッサージ代とか必要最低限のお金を除いて全額貯金してます。
――お酒はけっこうイケるとか
高木 好きですね。家族で飲むと両親が先に寝てしまって私だけが飲み続けています。
――よく飲むのは
高木 日本酒からワイン、ブランデーと何でもイケます。酒豪キャラが定着しているのか、21歳の誕生日プレゼントはお酒だらけでした。山口県の人からは獺祭とか、各地の地酒がいただけてうれしかったです。
――バーでも開店できそう
高木 ストックは50本ぐらいあります(笑い)。
☆たかき・もな 2004年4月6日生まれ、福岡県出身。162センチ、74キロ。父の和仁(76期)、祖父の工藤元司郎(16期=引退)も競輪選手。兵庫・神戸弘陵学園高2年の2021年夏には女子硬式野球で全国制覇。