いよいよ再開だ。2016年4月の熊本地震で被災し、休止が続いていた熊本競輪場がリニューアルを終え、20日開幕のFⅠ「令和6年能登半島地震復興支援競輪 熊本競輪再建記念」で本場レースが再開する。今や熊本輪界不動のエース・嘉永泰斗(26=熊本)にとっても本場での出走は初めて。仲間と同様、今節には特別な思いで臨んでいる。
やっと…、やっと…、やっとだ…。待ち望んでいた瞬間、空気、熱量、熊本の神髄を感じられる日が、やっと来た。
「自分が高校生のころはまだ開催をやっていて、野口(大誠)さんのデビュー戦を見に来たことがあるんですよ。先生が『見に行ってこい』って」
九州学院の先輩の走り、勝利、ファンの熱気に圧倒された。「俺もここで」――。奮い立つ思いが泰斗の全身を駆け巡った。だが、2016年4月の震災…。18年7月のデビュー後も走れるかどうか、分からない日々が続いた。
「やっと、です」
ギラつく瞳に、積み重なった思いがあふれる。「地元なんで」。背中には責任。対する相手も強烈だが、ひるむことはない。
「北井さんとはGⅠで対戦するし、倒さないとGⅠは取れない。北井さんを倒さないと」
6月岸和田GⅠ高松宮記念杯を制しタイトルホルダーとなった北井佑季(34=神奈川)の好きにはさせない。地元の意地と、秘めた思いを爆発させる。火の国、7月20日。再び、時計の針が動き出す。熱く、激しく、確かに…。選手とファンの鼓動が、1秒、また1秒を刻んでいく。