静岡県伊豆市の日本競輪選手養成所(所長=瀧澤正光)は総合トレーニング棟と候補生宿舎棟を融合した次世代型総合トレーニングセンターの建設を行う。工事着工に伴う起工式が18日、養成所で実施され、計画の概要が発表された。

 日本競輪選手養成所は1968年に東京都調布市から現在の場所に移転し、老朽化が進んだため改修の必要に迫られていた。木戸寛JKA会長は改修にあたって「今の時代にふさわしい施設」「次世代を担う候補生たちがアスリートとして、その才能を最大限に発揮できる施設」の2つをテーマとし、プロジェクトを組んできたと説明した。

 ナショナルチームのテクニカルディレクターであるブノワ・ベトゥ氏の協力を得てフランスの国立施設を参考に、次世代の競輪選手を養成するための計画を進め、いよいよ着工となった。総工費は精査中。

 現役競輪選手の北井佑季(34=神奈川)と太田りゆ(30=埼玉)がトークセッションに登場し、新施設への思いを語った。北井は「元プロサッカー選手の北井です」と自己紹介した後、「養成所に入ったことで私の人生は変わりました。その場所が次世代型の施設として生まれ変わることで、より多くの人たちの人生が変わるきっかけとなると確信しています」と自身の体験と未来への出来事を重ね合わせた。また、一般開放される予定もあり「その時はぜひ利用させていただこうと思います」と深い興味を示していた。

 太田は「在所中からナショナルチームに加入して、卒業後もガールズケイリンと平行して国際大会に出場し、念願だった五輪に出場することができました。養成所に入ったことが大きな人生のターニングポイントになったことは間違いありません。その場所が生まれ変わる。そう聞いてワクワクするような未来が想像できました」と瞳を輝かせた。また「女子候補生の住環境もより良くなる、とのことで候補生を目指す方も増え、ガールズケイリンの活性化にもつながる」と後進の育成にも大きな期待を寄せていた。

 設計を担当した㈱三菱地所設計の須部恭浩部長は「この計画は2022年夏くらいから始まったのですが、我々が驚いたのは、この施設は建築界の巨匠アントニン・レーモンド氏が立てたということでした」と現在の建物の美しさと価値について、畏敬の念を示した。「強い競輪選手をつくるために」と考えて着手したのが、教室や講堂がある建物、宿舎と400バンクを直結させることだった。

 現在、敷地内の移動には坂があり高低差が大きく時間がかかってしまう。高低差を建物を立てることで埋め、建物そのもので直結させることで移動時間をなくし「年間で約2週間分の時間を確保できる」という。2026年度に完成予定。大きく進化する養成所から、新時代の強く、たくましい競輪選手が生まれることになる。