125期、126期のルーキーを取り上げる「Challenge! 新人競輪選手紹介」。今回はプロ野球観戦と競馬が大好きという〝オヤジ顔負け〟の趣味を持つガールズ選手・伊沢茉那(27=千葉)の素顔を追った。

 人生の転機は22歳のときだった。大学を中退し、飲食店のアルバイトをいくつも掛け持ちする生活を送っていたが、コロナ禍の影響で仕事がすべてなくなってしまう。暇を持て余していたある日、「騎手になってみるのも面白いかも」と趣味の競馬をテレビで見ていてふと思い立ったが、すでに募集年齢をオーバー。そこで目をつけたのが公営競技の選手だった。

 競輪かボートか迷った末、適性体重が近いボートを選択し、2度目の試験で見事合格。しかし、養成所での厳しい生活に加え、操縦の難しさに直面し、わずか1か月半で辞めることに。「エンジンを操るのは自分に合わないな」と自覚した伊沢は「このまま逃げた形で後悔を抱えたまま次に進むのはイヤ。だったら、競輪に挑戦しよう」と決意を新たにした。

 競輪選手養成所を適性試験で一発合格し、入所。最初は「落ちこぼれ生徒だったと思います。周りに付いていけず、泣きながら周回したこともありました」と笑いをまじえながら振り返るものの、今年5月には無事にデビューした。

 9月には地元松戸で初勝利を収めるなど、着実に歩みを進めている。「失敗したり、つらいことも多いけど、毎日がすごく楽しいんです」と、キラキラと輝かせた目からは充実感があふれている。

 趣味はプロ野球の観戦で、特にヤクルトを応援する燕党だ。「推しはオスナ選手です。異国の地から来たのに日本の野球に適応し、オフの日も練習を惜しまないその勤勉さが好き」と話す。競輪に集中する今は、現地観戦する余裕はないが「慣れてきたら、神宮球場にもたくさん行きたい」とビニール傘とビールを手に東京音頭を合唱する楽しみは来年以降に取っておく。 

「いつか始球式に呼ばれたい。呼ばれるぐらい強い選手になりたいです」

 もし実現すれば、高校時代はやり投げの選手だっただけに〝ノーバン〟は当たり前。狙うは、同じくやり投げ出身で2022年ガールズグランプリ女王・柳原真緒が記録した球速96キロ超えだ。その日へ向け、まずは肩より脚を磨いていく。

【Q&A】

 ――競馬が好きだと

 伊沢 お金も賭けるけど、ギャンブルというよりスポーツとして見ています。

 ――得意な馬券は?

 伊沢 私、AB型で1番人気を買えない病なので、穴馬のワイドです!

 ――開催中の過ごし方は

 伊沢 最近は馬主に仕えた秘書の物語「ザ・ロイヤルファミリー」を読みました。面白かったので、開催で一緒だった日野未来さんに一方的に貸しました(笑い)。

 ☆いざわ・まな 1997年1月11日生まれ、千葉県松戸市出身。158センチ、57キロ。養成所順位9位。師匠は鈴木浩太。憧れの選手は同県千葉のエースの石井貴子で「初心を忘れず練習に取り組む姿勢を尊敬しています」。