前橋競輪GⅠ「第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」は26日、最終日の12Rで決勝戦が行われ、単騎の嘉永泰斗(27=熊本)が最終2角から猛然とまくりを放ち、GⅠ初優出Vを達成。賞金4390万円(副賞含む)を獲得するとともに、初のグランプリ出場権を手にした。
九州の若きエースが〝一発回答〟で決めてみせた。デビュー8年目にして初のGⅠファイナルへ勝ち上がると、巧妙な単騎戦がズバリ。疾風怒濤の一撃が決まり、九州に2019年の中川誠一郎(高松宮記念杯)以来となるGⅠタイトルをもたらした。
ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。同期の真杉匠や松井宏佑らが早くからS級で活躍する中、誘導員早期追い抜きによる失格や持病のヘルニアに苦しみ出遅れた。だが、それでも前を向き続けた。「同期の存在は常に刺激です。僕は他の人よりも確実に多くケガをしているので、対処法が身に付いた」と、ケガの功名でS級戦線へ向けて着々と力を付けた。
S級に昇級後は荒井崇博の助言で、ウエイトトレーニングに本格的に取り組む。プロとしての意識を磨き、さらに特別戦線での悔しさを糧に「最後まで戦い抜く体力を付ける」ことをテーマに地道な鍛錬を継続。最後まで売り切れないタフな体づくりに成功した。
師匠の倉岡慎太郎は言う。「苦労人でクソマジメ。最初に多くの壁にぶつかったから、今があるのでしょう」と普段のクールな表情とは裏腹に、相当の熱量を秘める叩き上げだ。
GⅠ制覇はあくまで通過点。この先には年末のKEIRINグランプリ、そして来年2月に地元の熊本で開催される「全日本選抜競輪」が控える。来年は競輪界を代表するS級S班の一員として、そして九州待望のニュースターとして、新たなステージへと歩み始める。