小倉競輪GI「第67回競輪祭」は最終日の24日、12Rで決勝戦が行われ、阿部拓真(35=宮城)が優勝。賞金5090万円(副賞含む)を獲得するとともに「KEIRINグランプリ2025」(平塚・12月30日)の出場権を手にした。阿部はGI初準決→初決勝→初優勝の快挙。3連単は504通りで最低人気の35万990円と、今年最後のGIは大波乱決着で幕を閉じた。

 元祖ミスター競輪といえば宮城の大先輩・阿部道さん(23期=引退)だが、拓真が競輪の奥深さ、怖さを知らしめた。

「マジ? これ!」

 競輪は何が起こるか分からない。9人の脚力、思惑、意地が織り交ざる究極の短編推理小説ともいえる。本人が「夢?」と話す結末が、緊張と興奮の小倉に、そして競輪の歴史に刻まれた。これが、競輪…。

「(吉田)拓矢にとにかく付いていって、荒井(崇博)さんが前に踏んだのでスイッチして。差せたのは、分かった」

 持ち味はタテヨコ柔軟に交えた走り。それが同期の番手回りでいかんなく発揮された。とはいえ、同県の和田圭は言う。「開催前は1班の勝負駆け、って言ってたんですよ! アイツ」。今期は1回失格がある状態で、元々落車失格が多いタイプ。加えて「一年に1回肺炎になったりするんです」というアクシデンタルレーサーなのだ。

 その男が起こした競輪史に残る〝アクシデント〟といっては失礼だが、北日本の仲間はみんな目玉が飛び出そうな顔で囲んでいたもの。しかし、紛れもなくグランプリ出場が決まり、来年はS班として赤いパンツを穿いて戦う。

「何も考えられない。でも決まっちゃったんで頑張るしかない」

 1983年オールスターの菅田順和(36期=引退)さん以来の宮城県勢のGI優勝。GI初決勝進出で大ホームランをかっ飛ばした男が、グランプリでも、その後も、ミステリアス競輪を演出していく。