小倉競輪の大阪・関西万博協賛GⅠ「第66回競輪祭」は最終日の24日、12Rで決勝戦が行われ、脇本雄太(35=福井)がまくりで優勝。優勝賞金4790万円を獲得した。脇本は2022年8月西武園「オールスター」以来、8回目のGⅠ制覇。同年12月平塚「KEIRINグランプリ2022」も含むビッグは11回目の優勝。
これが普通、ではない。今の脇本雄太にとって、その体において、優勝の実感は波のように迫る。「ホッとしてます…」。大きく息をついた背中に輝きと消耗が交錯する。強いのがワッキー、だ。
しかし…。
2021年開催の東京五輪でもケイリン準決のアクシデントがなければ、金メダルが…と思われた。世界一の肉体、地球一の精神を証明する瞬間は訪れなかったが、そこに至る過程で築き上げたものをその後は見せつけてきた。
だが、昨年8月西武園GⅠオールスターでの落車で、選手生命すら…という重傷を負った。今では「優勝を狙える状態」とはっきり口にすることはできない体になった。GⅠ優勝は遠ざかっていた。その体で再びたどり着いた栄誉――。
決勝は「寺崎(浩平)君がしっかり切ってくれて頼もしかった」と同県の後輩の奮闘に乗った。ただし犬伏湧也の逆襲は早く「距離、長いなと思い、かなりきつかった」と残り1周を過ぎてからは番手から出た。空気との長い戦いの末でも、上がりタイムは10秒9という破格のもの。後ろにハマっていた犬伏の追撃を封じた。
競輪祭は近畿の選手として59年ぶり(加藤晶・5期、京都)の優勝になる。脇本も苦手としていた大会で「取りたいタイトルと意識してました」と悲願達成に汗がにじんだ。グランドスラム達成には全日本選抜を残すだけとなるが「変に意識はせず。グランプリに向けてしっかりあと1か月、力を入れていきたい」と王者は静かに語り、近畿の仲間たちの笑顔の中に吸い込まれていった。