玉野競輪場で行われている広島市営FⅠ「サンフレッチェ広島レジーナ杯」は11日、2日目を開催。A級、準決勝4Rを走ったベテラン、加倉正義(54=福岡)が名人芸でバンクをわかせた。マーク屋稼業に生きる男のこれぞ真骨頂といえる走りで魅せた。
このレースは地元の山崎駿哉マーク。山崎が打鐘から主導権をにぎると、すぐさま菊池竣太朗の出足抜群のまくりが飛んできた。菊池は自力選手の中では競走得点上位の実力者。それでも加倉は焦ることなく2角から3角にかけて、じんわりと車間を空けつつ執拗なけん制を続けて菊池を不発に追いやった。
さらに直線では山崎を余裕でかわし、3番手の三木健治のコースにも気を払いライン3車で確定板を独占。「2角手前のブロックだけしっかりと。向こうから先に当たってきたからね。だけど、久しぶりにカッとするものがあって力が入ったね。しみついた何かがあるんでしょう。とにかく相手が転ばないでくれ、と願っていましたよ。失格だとS級がパーになるから(笑い)」とこれまで培ったテクニックを総動員した技ありの一番を心地よく振り返った。
仕掛けを阻まれた菊池は「普段ならまくれていた展開だったのに…」と天を仰いだ。「加倉さんのブロックはガツンと当たってくる感じじゃなくてフワッとしているんです。まくれたと思ったら遅れてから入ってくる。すごかったなぁ…。実はS級に上がって自在でやろうと思ったとき、加倉さんのレースダイジェストを見て参考にしていたんです。いい勉強になりました」と羨望のまな差しで、〝残してもらった″山崎も「加倉さんがいなければ絶対にまくられていました。ダイジェストを見返したけど、残れるとは…」と脱帽だった。