2023年GⅠ最終戦「第65回競輪祭」(小倉、11月21日~26日)の開幕が刻一刻と近づいている。北九州市出身の北津留翼(38=福岡)が、1月の悪夢の失格からの反転攻勢をかける。

 しかし一体、北津留翼とはどんな男なのか――。小倉の仲間に聞くと、完全に意見が一致した。

 園田匠は「語ったら語り切れない」と前置きしつつ「アイツは人間じゃない」と語気強く、吐き捨てるように話した。「人としても、自転車に乗る選手としても、何をやってもかなわない」。出会ってから20年近くになるが「アイツを見てしまうとやる気が失せる」ほどの存在だという。

 そして後輩の岩谷拓磨も「人間離れしています…」と証言し、「あんな人間、見たことない」レベルだと続けた。

 人間じゃない――。

 これがみんなの総意だ。園田の口からは「輪界一のポテンシャル。性能が違う。次元が違う。人の物差しで計れない」といくらでも出てくる。具体的には「アイツのトレーニングは人間ではこなせない」という。自転車の練習では苦しさで嘔吐することも多いというが「(ゲロを)吐くのが楽しいって言うんですよ…」(岩谷)。

 人間ではない翼の生えた怪物。今回は優勝しても罰則規定によりグランプリに出場できないが「もう優勝してGPに出られないとか、それくらいやってほしい。いや、翼ならやってくれるでしょ」と園田は切望した。常識を超えたドラマを、誰もが期待している。