前橋競輪場のFⅠ「ライジングスターズ」は20日、最終日を行う。決勝12Rに進出した芦沢大輔(41=茨城)が悲壮な思いを語った。

 準決10Rでは2着。橋本瑠偉の番手を競走得点は下回っていたものの、同県の佐藤礼文に主張し、回っていた。

「礼文には以前、函館で前を回していて、その後の戦いぶりに自分としては納得できないものがあったんです。いろんな人の評価があると思うけど、俺は納得できないと話しました」

 番手、というのは競輪において特別な意味を持つ。ラインの要として、先行選手を守り、そこに存在意義を見出す。戦うことが、生き様だ。

「7車立てが増えたのもあって、ジカ競りとかはあまりなくなったんですけど、俺が好きな競輪はあるんです。礼文に番手を回ると主張した以上、自分にもプレッシャーはあった。でもいつでも死ぬ覚悟はできています。常にこの気持ちで戦わないといけない」

 中途半端な生き方はしてこなかった。戦いを挑み、何度跳ね返されても、何度でも立ち向かっていった。だからこそ「礼文には自分の武器をつくって、ほかの選手が『前を回ってくれ』と言うような選手になってほしいんです」と思いを伝えたのだ。

 佐藤は準決を終えた後、「俺は、自力選手が俺が付いたら先行したいって思える選手になりたいです。今回、芦沢さんとしっかり話すことができて良かったです。絶対、頑張ります。イチからやり直します」と話した。その声は、震えていた。

 かつて4番手を回らざるを得なかった時、競りに行ってダメだった時、納得のいく仕事ができす先行選手をかばえなかった時――。若いころの芦沢の声が震えていたように。