武雄競輪GⅢ「開設75周年記念 大楠賞争奪戦」は12日、準決勝をメインに3日目を開催。近い将来、輪界を背負って立つ太田海也(25=岡山)も決勝メンバーに名を連ねた。
この男しかいない。時代は、寵児を求めている。普段はさわやかな青年。朗らかで、いつも周囲を明るくさせるもの。だが、昨年8月パリ五輪で味わった苦しみは、明るい青年から笑顔を奪い、前に進めなくなった。
「自転車に乗っていて、楽しいっていう気持ちが戻ってきました」
絶望の時から、1日、また1日と時が過ぎ、競輪や自転車競技に再び向き合うことで心はやわらぎ、そして強くなっていっている。今は目の前の戦いに集中することだけがすべてで、前に進むことにつながっている。
今回は地元佐賀勢との連係が多く「以前は地元の選手に任されてプレッシャーに感じることもあったけど、今はしっかり走れていると思う」と勝ち上がりの段階では、力を重ねて戦うことができていた。競輪の面白さ、深さを感じながら勝ち上がった決勝戦――。
地元勢とは別での戦いになる。山田久徳を連れて、自分ができることに集中していく。その先のことは、自転車が導いてくれる。たどり着けなかった場所が、確かにある。いつか、そこへ。今は、ひとつずつ階段を上がっていく。