2025年は宇都宮の夏が燃える。8月8~10日の3日間、栃木県にある宇都宮競輪場でガールズケイリンGⅠ「第1回女子オールスター競輪」がナイター開催で行われる。ビッグイベントを前に、地元ガールズの代表選手・荒牧聖未(34=栃木)に話を聞いた。長く栃木のガールズ輪界をけん引してきた荒牧の思いは、あふれんばかりのものがある。
「ビックリ…。ここでGⅠになって初の女子オールスター競輪をやるんだ…と」
穏やかな陽気に包まれた500バンクの長い直線を眺めやる。荒牧聖未はガールズ1期生として、ずっとトップ選手として活躍を続けている。宇都宮競輪場で過ごした時間は長く「常にここで練習しているので。気持ちは違います」と語気を強める。
「やっぱり1回目の大会っていうことで、特別だと感じています」
初めて宇都宮バンクで自転車に乗ったのは、競輪学校(現競輪選手養成所)の試験の3か月前。2010年の夏のことだ。それから約15年、ほとんど、ここにいた。ここで、メモリアルの大会が開かれるのだ。デビューしてからも「男子の選手と一緒に練習させてもらえていることも、自分には大きいです」と盛り上がる栃木輪界の中にあって、ガールズケイリンをずっと支えてきている。
人生最大の勝負といっていい。当大会の選考基準は「2024年12月~2025年5月の期間において(1)ガールズグランプリ2024の1~3位となった者、(2)パリ五輪自転車競技トラック種目代表選手、(3)1、2を除くファン投票上位20人、(4)選考期間における平均競走得点上位者。全42人」になる。「まずは出られることが一番。できればたくさんの方にファン投票で選んでいただいて、それで出られれば」。ファンの後押しを大きな力に変えて、その時を迎えたい。
24年はGⅠに出走できなかった。2月いわき平での誘導妨害の失格の影響が大きく響き「出走本数が足りなくなったりしてしまって、でも出られなかったのは自分の責任。だからこそ、一戦一戦を大事に走らないとって、より思っています」と、その後の戦いで進化を重ねている。
12年12月28日、京王閣競輪場――。第1回ガールズグランプリは2着だった。「悔しさは今でも残っています。あと1人抜けばグランプリを勝てていたんだ…って」。あと1人だけ、あと1人抜けていれば…。その後もガールズの特別レースでは準優勝止まり…。
選手として、地元で初のGⅠが開催される可能性は限りなく低い。「すごいこと! 初のGⅠなんてなかなかないこと。絶対に出たい。出られれば、地元なのでそれを生かして…」。瞳の輝きは、雷神の心の叫びをまとう。実直で堅実で、真面目過ぎるとすら言える性格。積み重ねてきたものにファンの後押しを得られれば、あの空を切り裂くことができる。何度も押しつぶされたあの、重い空を…。歓喜の雷鳴が、宇都宮の夏に待っている。
☆あらまき・さとみ 1990年4月28日生まれ、栃木県出身。167・6センチ、64・5キロ。ガールズ1期生として2012年7月にデビュー。ビッグレースは準優勝止まりだが、通算優勝63回、1着427回という実績を残している。