向日町競輪の大阪・関西万博協賛GⅢ「開設74周年記念 平安賞」が5日、開幕する。地元・稲垣裕之(47=京都)は向日町競輪場の改修前最後の開催となる地元記念に万感の思いで臨む。

 稲垣の心と体に刻まれた向日町競輪場の思い出は、筆舌に尽くしがたい。今大会後、約5年間の大規模改修を予定しており、現行のバンクを走るのは最後になる。「いい思い出も、苦しい思い出も両方ありますね」。記念優勝もある場所だが、競輪人生は総じて「苦しい方が多いです」と顔をゆがめるのが現実だ。

 6月には「手術するか迷うところでしたが、今回できるだけいい状態にできるように」と股関節の手術に踏み切った。現状でも「万全ではないですが」と調子を戻し切れてはいない。しかし、別格の気迫を持って挑むのみだ。

 2011年1月の当大会で初めて村上義弘さんの後ろを回った。「自分が鎖骨骨折後で自信がなかったのを見て、村上さんが前で、という形になりました」。後ろになったことで「初めてプロテクターを付けて走ったんですが、村上さんからは『お前に何ができんねん』とイジられました」と笑って振り返る。成長を促してくれたあの時が、今も沁みる。

 初日の8R一次予選、思いを込め、白星で勝ち上がりを決める。