マグマの鼓動が全国に響き渡る。平塚競輪GP「KEIRINグランプリ2025」が12月30日、優勝賞金1億4600万円(副賞含む)を懸けて争われる。昨年大会を○古性優作◎清水裕友×脇本雄太で的中した前田睦生記者が狙うのは…。熊本が送り出すマグマエンペラー・嘉永泰斗(27=熊本)。苦闘の時間を糧にし、たくましく美しい時代をつくり出す。

 七千段の階段を上り詰めた頂上で、皇帝は即位を高らかに宣言する。その山、泰山。あまたにきらめく星の王様は、北斗。じっと地に足をつけ、その肉体から輝きを…、嘉永泰斗が今、頂点に立つ。
「楽しめれば」

 27歳の若武者は朗らかに笑う。まだ、若いといっていい。「九州、熊本を背負うとか、そういうのでも…、ハハハ」。同世代の仲間たちが先を行く姿を、先頭誘導員早期追い抜きによる長期あっせん停止、また鎖骨の骨折などもあり、はいつくばって見つめてきた。その瞳は、若い。

 19日の前夜祭では華やかな舞台を体験し「いろいろと気を遣うところがあって疲れましたね(笑い)」。脇本雄太や古性優作を見て「慣れているみたいで風格ありましたね」と感じつつ「絶対、出続けたいです」と心が燃えた。夢舞台までの時間を楽しみながら、マグマが震える。

「車番も悪いし、いい位置も取れないと思うけど」

 レースに関しては現実的な戦略と向き合った後、しかし「自分のやることは変わらないんで」。どんなレースでも、流れに沿って、行くべきところで行く。それを意識してきた。挑む瞳の若さに、希望の灯がともる。

 熊本は2016年4月の震災に傷つき、アマチュア時代から熊本の復興の過程をともに歩んできた。2021年10月、久留米競輪場で代替開催された熊本記念を優勝し、昨年7月の熊本競輪再開のシリーズを優勝…。熊本のこれからは、自然と泰斗の〝両脚〟にかかってくる。

 論をまたない。来年2月にはGI全日本選抜の開催も熊本で決まっている。「泰斗、その時は赤いパンツで走ってよ!」。そんなファンの声を聞いて「目標でした。まずそれがかなったのはうれしい」と今年10月のGI初制覇を喜んだ。階段を着実に…。この人、こそ。

 近畿4車と関東2車の対峙から始まる「KEIRINグランプリ2025」。地元で必死の形相は郡司浩平。乱戦上等は阿部拓真。泰斗の心臓は、そのマグマは、激しく鳴る。しかし、冷静に。チャンスは一度。自分が踏むべき一瞬にかける。若き皇帝のガッツポーズは、大地を、空を焦がす。

 泰斗、お前はもう、勝っている――。